好きだなんて言えません




抹茶も素敵だなぁ〜と
気分良く食べ進めていたら颯が話し始めた



「それで転校した理由だけど」


そういえばそれ目的だった



「前いた学校は親父が理事長なんだ。だからそこにしろって言われて入ったけど、やっぱり親父の支配下にいるのが嫌になって。」


「嫌いなの?お父さんのこと」


「そういうわけじゃないけど。まあ家でも学校でも自分の休まるところが欲しかったのが一番の理由かな。」



窓の外をぼんやりと見つめながら話をする颯を見た




息がつまる環境に常に身を置いてきた颯はきっと少し疲れたんだろう


気を張り詰めすぎたんだ


それだけお父さんの立場を考えて生きていくのはそれだけ大切に思っているからで





やっぱりこの人はいい人だと思う








「たまには外の世界を知るのも視野が広がっていいよ。」



颯に言いたいことが伝わったらしく、

ありがとう、と優しく笑った



その時、颯の目を見て優しい笑みを浮かべていたことに私は気づいていなかった









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