恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。




夕方になって、私はずぶ濡れのまま家へと帰ってきた。

サボったなんて両親に知られたら、部活を辞めさせられるかもしれないので、あてもなくさ迷って時間を潰したのだ。

でも、今の私にあの部活にいる理由なんてあるのだろうか。

雅臣先輩を追いかけてきたのに、今は……なんのためにあそこにいるのかが、わからなくなっていた。


中に入ると、玄関には珍しく両親の靴があった。

医者であるふたりは激務のため、めったに家にいない。

宿直や急な呼び出しで病院に泊まる事が多いのだ。


「ただいま」


リビングに顔を出すと、ダイニングテーブルにいるお父さんとお母さんが私を振り返る。


「こんな時間まで部活なの?」


時刻は午後18時、これでも今日は早い帰りだった。

いつもならこの時間に部活が終わって、家につくのは午後19時頃になるから。

こういう私の生活リズムも、このふたりは知らないんだろう。

いや、私の事に興味がないのだ。


「うん……そうだよ」

「遊んでる時間なんてないんだぞ、お前には」


目尻を釣り上げて、厳しい目を向けるお父さん。


「…………」


私は無言で唇を噛み、拳を握りしめる。

ふたりは、私がびしょ濡れで帰っても心配のひとつもしない。

口を開けば、あれをするな、これをするなって……。

いつも説教ばかり、いつも人の意思を奪うように押さえつける言葉を投げかけてくる。


遊んでるって……。

お父さんは私が毎日、部活で遊んでいると思ってるのだろうか。

本当にこの人たちとは家族だなんて思えないほど、価値観が合わない。


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