恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「在田先輩は、嫌なら逃げられる道を歩いてる。なら、全然悩むことないじゃないですか」
私は、逃げられないのに。
親にあらかじめ引かれたレールの上を、進むことしか許されないのに。
他人に対して関心のない私は、めったに腹を立てることはない。
なのになぜだろう、すごく苛つく。
「そんな、子供みたいに反抗して……」
そんなのずるいと、思ってしまった。
だから、言葉も自然と刺々しいモノになる。
──あぁ、私。
自由なのに不幸ぶる在田先輩に、嫉妬してるんだ。そんな最低な考え方をする自分が嫌になる。
「うぜぇ」
静かな彼の呟きが、私の胸に深々と突き刺さる。
たった三文字の言葉が、こんなにも痛い。
彼を傷つけた痛みと同じなのかもしれない、と思った。
「俺の何も知らないで、勝手な事言うんじゃねぇーよ!」
猛獣の咆哮のように、在田先輩は叫んだ。
「っ……!」
空気がビリビリと割れるような、そんな感覚に陥って私は肩をビクつかせる。
しまった……言い過ぎだ。
何も知らないくせに子供みたいとか、本当に最低な事を口走ってしまった。