恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。


「あっ……」


行っちゃっだ……相変わらず謎な人だ。

学校の最寄りではない駅で降りてしまった雅臣先輩を呆然と見送る。

嵐のように慌ただしく、彼は去っていってしまった。

でも、雅臣先輩に体を支えてもらっていたせいか、体調は回復している。

部活出会ったら、お礼と今の珍行動について問い詰めてみよう。


『次は~○○駅~』


ようやく着いた……。

電車が最寄り駅に着き、私はヘトヘトになりながらホームへ降りる。

少しだけ透明度が増した空気を胸いっぱいに吸い込んで、人波に流されるように学校へと向かうのだった。




雨のムワッとした湿った空気の立ち込める教室にやってくると、私はクラスメートに挨拶しながら自分の席へと座る。

すると、隣の席の物部さんが弾かれるように私の方を見て「あっ」と声を上げた。

物部さんから何か言ってくるなんて珍しいな、と思いながら、私は彼女の言葉を待つ。

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