イジワル部長と仮りそめ恋人契約
「……わかったよ」
それだけ言って、再び悠悟さんが歩き出す。
手を引かれている私も、必然的に同じ方向へ。繋がったその手に視線を落としながら、口を開いた。
「悠悟さん」
「なんだよ」
「手、繋いだままですけど」
沈黙が落ちたのは、一瞬のこと。
私の顔は見ずに、ツンとした調子で彼が言う。
「危なっかしいから、リード代わりだ」
ふはっと、堪えきれずに笑みが漏れた。
言われている内容は、ひどいものだ。なのに全然、腹が立たない。
それはきっと、悠悟さんがどことなく拗ねた表情をしているように見えたからかも。
「ほら、志桜。落とすなよ」
「落としませんよ!」
レストランのカウンターで悠悟さんからソフトクリームを受け取りながら、わざと頬をふくらませる。
ぺろりとひと口舐めてみれば、ひんやり冷たくて、けれど甘い。
この甘さの一部分だけでも、悠悟さんが私に向けてくれたら、なんて。
本物の、彼氏彼女じゃない。
1ヶ月だけの、期間限定の恋人同士。
それでも今私たちはきっと、周りからは普通のカップルに見えている。そう思うだけで、自然と私の体温が上がる気がした。
それだけ言って、再び悠悟さんが歩き出す。
手を引かれている私も、必然的に同じ方向へ。繋がったその手に視線を落としながら、口を開いた。
「悠悟さん」
「なんだよ」
「手、繋いだままですけど」
沈黙が落ちたのは、一瞬のこと。
私の顔は見ずに、ツンとした調子で彼が言う。
「危なっかしいから、リード代わりだ」
ふはっと、堪えきれずに笑みが漏れた。
言われている内容は、ひどいものだ。なのに全然、腹が立たない。
それはきっと、悠悟さんがどことなく拗ねた表情をしているように見えたからかも。
「ほら、志桜。落とすなよ」
「落としませんよ!」
レストランのカウンターで悠悟さんからソフトクリームを受け取りながら、わざと頬をふくらませる。
ぺろりとひと口舐めてみれば、ひんやり冷たくて、けれど甘い。
この甘さの一部分だけでも、悠悟さんが私に向けてくれたら、なんて。
本物の、彼氏彼女じゃない。
1ヶ月だけの、期間限定の恋人同士。
それでも今私たちはきっと、周りからは普通のカップルに見えている。そう思うだけで、自然と私の体温が上がる気がした。