イジワル部長と仮りそめ恋人契約
「おい、そんな一気に飲まなくても」

「悠悟さん、これからどうします? DVDでも観ましょうか?」



彼の言葉を遮り、早口で訊ねた。

まだ、19時前。明日は日曜日だし、大人ならこのくらいの時間まだまだ余裕のはずだ。

問われた悠悟さんは一度壁掛け時計に目を走らせてから、「あー」とつぶやく。



「そう、だな。どんなのある?」

「これとか、お兄ちゃんが勝手に置いて行ってまだ私は観ていないやつなんですけど」

「は? こんなエグいスプラッタ映画妹の部屋に置いて行ったのか? おまえのシスコン兄貴おもしろいな?」

「私は別に、ひとりで普通に観れますよ」

「……とりあえず、こっちにしとくか」



結局悠悟さんが手に取ったのは、誰もが知っているハリウッド俳優が主演の、お菓子工場を舞台にしたファンタジー・コメディだった。

私は別にスプラッタ系でも平気なんだけどな……とは思ったけれど、世間一般の女子があまりよろこんで観るジャンルじゃないとは理解していたので、ここは大人しく口を噤んでおく。



「志桜がスプラッタ映画に耐性あるとか、意外すぎた」

「……そうですか?」



未だに納得のいっていない様子の悠悟さんに、首をかしげる。

デッキにDVDをセットし、他の映画の予告が流れている間にコーヒーでも淹れようかと、私は立ち上がった。
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