イジワル部長と仮りそめ恋人契約
私を見下ろす彼の顔が、逆光になっていて見えにくい。
ただその表情が真顔だということは、なんとなくわかった。
「あ、あの、悠悟さ……」
「うん、そっか」
こちらの呼びかけを無視し、なぜかひとりごとのようにつぶやいた悠悟さん。
その左手が、私のすぐ真後ろにあるソファーの背もたれをギシリと掴んだ。
必然的に、近づく距離。ドクンと心臓が高鳴るのと同時に、悠悟さんは空いていた右手で私の肩を押す。
一瞬本気で訳がわからなくなった。私はソファーの座面に背中をつけていて、そんな私に覆いかぶさるように真上には悠悟さんの顔がある。
その左手の指先が頬に触れてきて、びくりと身体が揺れた。
「“偽”だろうが、俺はおまえの彼氏なんだから──こういうことだって、してもいいんだよな?」
『こういうこと』。
そう言われてたぶん正しく意味を理解した私は、ボッと顔に熱が灯るのを感じた。
口もとに笑みを浮かべた悠悟さんが、私の左耳にくちびるを寄せる。
「手料理の礼に──足腰たたないくらい、かわいがってやろうか?」
「……ッ」
低く甘い声でささやかれた瞬間、ゾクリと身体中に電流が走った。
悲しいわけでもないのに、なぜか涙が浮かぶ。こんなに火照った顔を見られたくないのに、思うように手が動かせなくて隠すこともできない。
何も言えず、ただ黙って悠悟さんを見つめると、ふっと彼は口もとをやさしく緩めて私の前髪を撫でた。
「いっちょまえに、男煽りやがって。……馬鹿だな」
ささやくように言ったかと思えば、そのまま身体を起こす。
呆然とソファーに横たわる私を、いつもの意地悪な微笑みで流し見た。
ただその表情が真顔だということは、なんとなくわかった。
「あ、あの、悠悟さ……」
「うん、そっか」
こちらの呼びかけを無視し、なぜかひとりごとのようにつぶやいた悠悟さん。
その左手が、私のすぐ真後ろにあるソファーの背もたれをギシリと掴んだ。
必然的に、近づく距離。ドクンと心臓が高鳴るのと同時に、悠悟さんは空いていた右手で私の肩を押す。
一瞬本気で訳がわからなくなった。私はソファーの座面に背中をつけていて、そんな私に覆いかぶさるように真上には悠悟さんの顔がある。
その左手の指先が頬に触れてきて、びくりと身体が揺れた。
「“偽”だろうが、俺はおまえの彼氏なんだから──こういうことだって、してもいいんだよな?」
『こういうこと』。
そう言われてたぶん正しく意味を理解した私は、ボッと顔に熱が灯るのを感じた。
口もとに笑みを浮かべた悠悟さんが、私の左耳にくちびるを寄せる。
「手料理の礼に──足腰たたないくらい、かわいがってやろうか?」
「……ッ」
低く甘い声でささやかれた瞬間、ゾクリと身体中に電流が走った。
悲しいわけでもないのに、なぜか涙が浮かぶ。こんなに火照った顔を見られたくないのに、思うように手が動かせなくて隠すこともできない。
何も言えず、ただ黙って悠悟さんを見つめると、ふっと彼は口もとをやさしく緩めて私の前髪を撫でた。
「いっちょまえに、男煽りやがって。……馬鹿だな」
ささやくように言ったかと思えば、そのまま身体を起こす。
呆然とソファーに横たわる私を、いつもの意地悪な微笑みで流し見た。