好きの海に溺れそう
確かに体育祭だからいろんな人と写真撮ったりはするけど…。



でもやっぱりいや。



あたしが出ていこうとしたとき、海琉が口を開いた。



「ごめん、彼女に心配かけたくないから」

「写真だけ…だよ?」

「それでも、俺が杏光の立場だったらやっぱり嫌だから。1mmの不安も心配もさせたくない」

「大事に…してるんだね…」

「うん、一番大事な人…です」



海琉のその声はちょっと照れてて。



そんな風に思ってくれてる海琉がうれしくて申し訳なくて、涙が頬を伝うのを感じた。



「そっ…か。じゃあ…しょうがない…ね」



るみちゃんはそう言って海琉に背を向けた。



だけどくるっと向きを変えて口を開いた。



「好きです」



涙を浮かべた笑顔で海琉にそう言う。



海琉は驚いた顔。



あたしも驚いてる…。



「それだけ言いたかった。じゃあ、彼女さんと…お幸せに」



るみちゃんはそれだけ言ってから、行ってしまった。



え…っと…。



「海琉」



驚いたままの海琉に声をかけた。



「海琉…ごめん」

「え?杏光?なんで謝るの?」

「あたし…ただ妬いただけなのに、気持ちが抑えられなくて、海琉に嫌な思いさせた…」



海琉は黙って聞いている。



「海琉は何にも悪くないってわかってるの。ただ、ほんの少し、不安になっちゃった…。だから、ごめん」



海琉の目を見る。



海琉はふっと優しい顔になった。



「俺も強く言いすぎちゃった。ごめんね?」



あたしはうつむきがちに首を小さく横に振る。



「松尾さんの性格がどうであったって、俺が杏光を好きなことには変わりないんだよ。杏光だけを好きなことに変わりない」



海琉の顔をまっすぐ見た。
< 100 / 350 >

この作品をシェア

pagetop