好きの海に溺れそう
~杏光~

海琉と若干険悪な空気になってると、そんな空気もお構いなしにスマホが鳴った。



見ると、日夏から。



空気は悪かったけど、気にせずスマホを開いた。



海琉なんて別にいいもん…。



日夏からは、『今日泊まりにきて!』というメッセージが届いてた。



いきなりのことでびっくりするあたし。



『はぁ!?明日、歩とデートでしょ!?』



そう。明日は日夏と歩がデートする日。



あたしに後押しされながら日夏が歩にOKをした。



少し待ってから帰ってくる返事には『デートじゃない!いいから来て!』と書いてあるだけだった。



映画二人で行くならデートじゃん…。



それから、海琉と軽く言い争いをして、逃げるように海琉の家から出た。



海琉のバカ…。



家に帰って、日夏の家に行くため、歯ブラシと下着と明日の服だけ用意した。



あとは日夏に借りよ…。



イライラしたまま日夏の家まで出かけていると、いつの間にか怒ってたことを忘れてしまった。



「日夏、来たよ」

「あ、杏光!上がって!」



日夏は高校に入ってからの友達だけど、日夏の家には何度も来たことがある。



日夏には三つ下の妹、六つ下の弟がいる。



「杏光ちゃんだ。やっほー」

「ケンタじゃん。久しぶり」



11歳の弟くん、ケンタ。



あたしに懐いてくれてる。



「俺ね、彼女できた!」

「彼女!?ませちゃってー。ケンタはあたしが好きなんだとずっと思ってたのになー」



もちろん冗談だけど、あたしとしては少し寂しさもあったり…。



「さてと、明日デートの日夏さんは何の用ですか?」



日夏の部屋まで来てあたしは言った。



「色々と…アドバイスください…」

「アドバイス?」

「とりあえず服が決まんないの!」



ああ、そういうね…。
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