好きの海に溺れそう
俺もそうだったけど、俺たちのときよりも状況が状況だったからもっと気まずいだろうな…。



「まあ人の気持ちばっかりはしょうがないか」



杏光はそう言って話を終わらせた。



あの2人にも、いつか俺たちみたいに笑える日が来てほしいな…。



駅に着いた。



暖かかった車内から一変、外は凍りそうな寒さ。



「海琉、マフラー巻いて?」



杏光が俺を見てかわいくお願いする。



杏光は、変なところで不器用で、自分でマフラーが巻けない。



だから毎年人に巻いてもらってる。



もはや風物詩みたい。



「出た、今年初。子供じゃないんだから…」



文句を言いながら杏光からマフラーを受け取る俺。



「とか言って巻いてあげてるのが嬉しかったりするくせに~」

「うるさいな~…」



まあ正解だけど…。



正面から杏光にマフラーを巻いてあげる。



端から見たらバカップルだよね、これ…。



「はい、できた」

「ありがと!」

「ん」



杏光と手をつないでテーマパークに向かう。



すっごく寒いけど、手だけはあったかい。



クリスマスだけあって、周りはカップルだらけ。



俺たちもその風景の一部ってなんか変な感じだ。



着いてから、俺たちはおそろいの耳のカチューシャをしてみたり、手をつないで歩いたり、たまに杏光が俺の腕にくっついてきたりして、世間一般のカップルみたいに過ごした。



「おそろいとか何気に小学生以来!」



俺の頭に着いてるネズミの耳に触りながら杏光が笑った。



たまにはこんな感じではしゃぐのもありだな。



「小学生のとき流行ってたよね、おそろい」

「あたしと海琉と悠麗と玖麗でストラップおそろいにしたりとかしたよね」



そういえばそんなこともあったな。



今あれどこにあるんだろ。
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