好きの海に溺れそう
歩きながらそんな会話をしてたら、急に杏光が俺の腕を引っ張った。



「海琉海琉!」

「ん?」

「お化け屋敷!」

「えっ」



杏光がお化け屋敷を指さして示した。



お化け屋敷の前には死装束をした人がいかにもな感じで立ってる。



「行こ!」

「杏光いっつもそう言って勇んで入って結局半泣きで出てくるじゃん…」



そう言ったら杏光が少しむくれた。



「でもあたしだけじゃなくて海琉もいつも怖がるじゃん!」

「ならなおさら行く意味ないじゃん!」

「ん?たしかに…。とりあえず行こ!」



嫌だ~…。



俺の抵抗もむなしく、杏光に無理矢理引っ張り出されてお化け屋敷に連れてこられた。



当たり前だけど中は暗い…。



怖いって…。



杏光もいきなり怖そうにしてる。



だから言ったのに…。



杏光が、繋いでる俺の手をたぐり寄せるようにして、俺の腕をしっかりと両手で掴んだ。



次の瞬間、上から人形が降ってきた。



無理!!!



「いやーっ!!!」



杏光が、お化け屋敷の外まで確実に聞こえるような大声で叫んだ。



「もう無理もう無理もう無理。ねえ海琉出よ?」

「出られるんだったら俺も出たいよ~…」

「こんな細い腕1本じゃむ…キャーッ待って!本当に!無理!」



俺も無理~…。



俺は怖くて口数少ないし、杏光はギャーギャーうるさい。



完全にカオスだ…。



「ね、こんな細い腕じゃ無理だから!抱っこ!して!」

「何言ってんの杏光…」

「これ以上進むとか無理…あああーーなんでこんなところに血が垂れてんのよ!!」



杏光がキレながら俺の腕を折れそうなくらい力を入れて歩く。



怖いけど腕の方も痛い痛い…。



2人でなんとか歩き、ようやく外に出た。
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