好きの海に溺れそう
「あー…もう入らない、お化け屋敷なんて…」



杏光がげっそりしながら言う。



「それ前に入ったときも言ってたよ」

「…」



黙っちゃった…。



それから夕方になって、ジェットコースター。



「落ちる瞬間に写真撮られるって」



昇りながら隣の杏光に言う。



にしても、落ちる前のこのドキドキ感、半端ないな…。



吊り橋効果っていうけど、ジェットコースター効果もいけるんじゃないかな。



なんてこと考えてたら、杏光から「手…」という少し震えた声が聞こえた。



「ん?」

「握って…」

「はい」



可愛い…。



このドキドキは、どっちのドキドキ?



杏光の膝の上にある手を上からぎゅっと握った。



瞬間落ちたジェットコースター。



ちょうど同じタイミングでイルミネーションがパーク内いっぱいに点灯した。



「わー!!」



キャーが混じったような声が、乗客全員から漏れた。



綺麗…。



こんな景色は他に知らなくて、隣には指を絡ませた杏光がいる。



幸せだな…。



降りたあとは、販売されてる写真を買った。



「あはは、見てこの顔。海琉かわいすぎるんだけど」

「杏光の方が変な顔!」

「違うよわざと変な顔にしたの!」

「ほんとー?」



笑いながら、そのあとも一日中デートを楽しんだ。



夜はレストランでクリスマスケーキとかも食べた。



そして俺たちは今日泊まる近くの旅館へ。



仲居さんに通された部屋は広くて綺麗。



「すごーい!」



元々上がってたテンションが、メーター振り切れちゃいそうだ。
< 132 / 350 >

この作品をシェア

pagetop