好きの海に溺れそう
大好き…。



夜の通りは意外と人通りが多くて、たまに何人か通る。



そんな人たちの人目も気にせず、2人でずっとイチャイチャしてた。



さすがにキスはしなかったけど…。



「海琉、ありがとね」

「ん? なにが?」

「あたしがやりたいって思うこと、なんでも心から応援してくれて」



そう言って海琉を見たら、優しい顔であたしの頭を撫でた。



それから、あたしのマフラーに触る。



「上手に巻けてる」

「おかげさまで」

「でも…たまには俺も、やってあげていい?」



切なそうな顔。



心臓がきゅっと音がした。



あたしはその頬に触れる。



「やってくれるの?」

「やりたいの」

「いつでもして…」



何かが一歩進むとき、嬉しい反面ちょっと寂しくなる。



その感情を海琉と一緒に共有できたなら、それはとても幸せなことだ。



こんな風に海琉とこの先も一緒にいられたらいいな。



あたしの一人暮らし前最後の夜は、そうして更けた。
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