きみが嘘をつくから。

ドルチェ




人が少なくなってから教室を出た。


付き合ってるの?って聞かれるのは面倒くさいから人に見られたくない。



「どこ行くの?」

「んー、どこ行こっかな。」

上着のポケットに手を入れて歩く大輝の肘が時々当たる。



近い、普通こんなもんかな?


歩く時の距離とか、まだよく分からない。



「決めてないの?」

「うん。」

「じゃあ、ドルチェ行こう。」


ドルチェは学校から1番近くにある人気のカフェ。


学校帰りに寄る生徒も多い。



知ってる人に会うかもしれないけど、ここら辺何もないからどこに行っても一緒だろう。



「いいよ。俺あんま行った事ないわ。」

「そーなん?私は愛梨とよく行ってる。」

「確かに女子は好きそうやな。」

「あそこのショートケーキめっちゃ美味しいよ!」

「じゃあ、それ食べてみよっかな。」

「食べ食べ。私はもう10回くらい食べた。」

「流石。」


二人っきりでどこかへ行くのは初めてで最初は少し緊張したけど、元々仲は良かったしすぐに慣れた。





季節限定という言葉に惹かれ、私は桜のロールケーキを食べることにした。



「おいしい〜。」

口に入れた瞬間、言葉が漏れる。


生地も生クリームもふわっふわで美味しくて、散りばめられたチョコで作られた桜はリアルで綺麗だった。



「んっ、うんま。」

大輝は私が勧めたショートケーキを一口食べ、同じ様に言葉を漏らす。


次いでもう一口食べ、幸せそうに笑顔を浮かべた。



何回も食べた事あるけど、目の前で食べられるとすっごい食べたくなってきた。



「…いる?」

いつの間にかケーキをガン見してたみたいで、大輝が笑いながら聞いてきた。



「いーの?」

「うん。ほら。」

一口取ろうと思ったら、ケーキを乗せた大輝のフォークが口元まで運ばれた。


これは、…間接キスだ。



遠慮がちにそれを食べる。



「おいし。」

いつも以上に甘い気がした。


満足そうな笑みを浮かべる大輝から、恥ずかしくなって目線を逸らす。




私、大輝の彼女なんだよね。


少しずつその実感が湧いてきた。



ちゃんと好きになれるまで、この優しさに甘えていてもいいかな。


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