糖度高めな秘密の密会はいかが?
デスクの前に立って居ても、カチャカチャとキーボードを叩く音しか聞こえず、有澄は私を見ようともしない。

日下部さんと二人で外回り行って来たから、怒ってるの?

「あーりとっ。紅茶入れて来ようか?」

ご機嫌を取るかの様に、有澄の椅子の横まで行って顔を覗き込む。

「……ゆかり…」

有澄は急に立ち上がり、両手を束縛されデスクに押し倒された。

冷たく硬い感触が背中に伝わり、書類やペンが床に散らばる。

有澄に上から見下ろされ、思わず目線を反らす。

「…有澄、怒ってる?」

恐る恐る聞いたが返答はなく、唇を塞がれただけだった。

息も出来ない位の激しいキスの途中で、ブラウスのボタンを外す感触に気付く。

身動きが取れず、いつもとは違う優しさがない強引過ぎる有澄が少し怖くて目から涙がこぼれた。

「……ごめん、考えすぎだった」

右手で口を覆い隠す様にして話す有澄は私から離れて、椅子に座る。

私もゆっくりと上半身を起こし、ブラウスのボタンを止める。

「有澄が心配してる様な事は何もないよ?」

デスクの上に座ったまま、涙をぬぐいながら有澄に微笑む。

「信じてたんだけど…旅行に行った時にゆかりが"日下部さんの跡消して"って言ってたから、今日1日気になって仕方なかったんだ…。本当にごめん」

デスクに突っ伏し、うなだれる有澄。

旅行の日の夜は酔っていて記憶がないのだけれど、今まで隠していた日下部さんとの事を話していたらしい。

有澄は記憶がない私が話した事を聞かなかった事にしようとしていたらしいけれど、気付かぬ内にストレスを抱えていたのだろう。
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