向日葵にさよなら。

「自分のため?」

「うん、だからね、松波くんに選んでほしいんだ。私に似合う花! あ、一本からでも買えるかな? 恥ずかしい話、お金がなくて」 

 恥じらうように笑う倉本はとても可愛くて、ここら辺にある花よりも華やかだった。
 心が高揚しているのは、彼女に見惚れたからではなく、花を選んでほしいといわれたからだと思う。

 どうして、彼女は自分のために花を買いにきたのだろう。
 なぜ、僕に選んでほしいのだろう。その意図がまったくわからない。

 でも僕は、不思議と、倉本の期待に応えたいという気持ちしかなかった。


「もちろん、一本からでもいいよ。じゃあ、選ぶから少しだけ待っていて」

「嬉しい! ありがとう」

 倉本の視線を背中に受けて、彼女に似合う一本の花を選び始めた。


 
< 32 / 36 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop