・キミ以外欲しくない
「で、こっちがバスルームだ」
スモークのドアを開けられ、第一声が「うわぁ」だ。
何処に連れて行かれても、さっきから初体験そのものの感想しか口から出ない。
広いバスルームに驚くことながら、奥の窓から見えているのは綺麗な夜景の絵。ではなく、正真正銘の今夜の夜景だ。
お風呂に入りながら夜景が眺められるなんて、普通ならあり得ないだろう。
もしも私のアパートで風呂場の窓が開けてあれば、覗き魔に「どうぞ覗いてください」と言っている様なものだ。
これも、上層階だから出来る贅沢なことなんだなぁ。
などと感心している私の背後で「ぐぅぅっ」と腹の虫が鳴った。
お腹が鳴ったのは私ではない。
ということは……。
振り返ると、私に気付かれたのか恥ずかしかったのか。
副社長が照れるように困った顔をして口を開いた。
「そういえば、まだ夕飯食べてなかったな」
「あ、そうですね。会社を出て、うちに少し寄っただけで直行でしたしね」
そう答えた私を繁々と見つめる副社長から、唐突に「サイズは?」と尋ねられた。