・キミ以外欲しくない
昨夜のリラックスしたルームウェア姿の副社長とは違い、スーツ姿でもないラフな格好。
またしても新しい一面を見せられた私には、刺激が強い。
テロンとしたシャツが、妙に色気をダダ漏れさせていて。
思い出すだけでもドキドキしてくる。
「あー、もぉっ。しっかりしろ、私! 今日は仕事の一環なんだからっ」
「雪乃、準備出来た?」
独り突っ込みをしていると、鏡越しの背後に副社長の姿が映り込み、驚いて振り返る。
副社長の手には、昨夜付箋をつけたショップリストが握られていた。
「これ持って行くんだろ?」
「あ、はい。私のバッグに入れて行きます」
手を差し出すと、その手を取った副社長に繁々と見つめられ「指輪、持ってる?」と尋ねられた。
「持ってますけど、安物ばかりですよ?」
「見せて」
ボストンバッグからアクセサリーポーチを取り出し、その中から数点の指輪をリビングのテーブルの上に並べる。
副社長は暫くそれらを眺め「取り敢えずこれを着けて行くか」と、シンプルなピンクゴールドの指輪を手にし私の左手を取り、それを薬指にはめた。
「今日は新居引っ越しに必要な物を選んでいる恋人同士だ。指輪をしていた方がそれっぽく見えるだろ」