飛蝗者

o1

私が正大に父のことを話さなかったのは、必要性を感じなかったからである。

正大が祖父母に育てられたということは何かの機会に聞いていた。
それに対して気を遣ったわけではなく、自身はそのように申告を必要とするような家族構成ではないと思ったのだ。

1度、出会ったころに親の仕事を聞かれたことがあり、その時は馬鹿正直に芸術家なんて現実味にかける回答をした。
正大はなんだそれと笑ったけれど、君も同じだろうなんて分かったような口はきかないでくれた。
家族構成や成長の過程は異なるにしろ、きっと環境は似ていたのだと思う。
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