最後の恋 【番外編: 礼央目線】
「汚くて、びっくりした?」

「う、ん…少しだけ」

「これでも少しは片付いたほう。杏奈に振られて…なにもする気が起きなかった。…ってこれ言い訳だな。」

「本当に…ごめんなさい。」


彼女の前にコーヒーを置くと俺もその隣に腰を下ろす。


「その謝罪って、別れを取り消すって事でいいんだよね。もちろん、それ以外の謝罪は受け入れるつもりもないけど。」

「一ノ瀬くんの事が大好きなの。本当は終わりにしたくなんてなかった。だから…別れると言った言葉を取り消しても…いいですか?」


彼女の視線がまっすぐ俺に向けられている。


その瞳は不安気に揺れていた。何も言わない俺に彼女はたまらなくなったのかギュッと目を瞑った。


その瞬間、彼女の唇にそっと触れるだけのキスをした。


びっくりしたように驚いた顔の彼女が目を見開きこっちを見ている。


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