最後の恋 【番外編: 礼央目線】
そして、今度は俺が口を開いた。


「……その皆の中に、松野さんはいるの?」


その直後、彼女はグラスを倒しそうになっていたが慌てて手で押さえ事なきを得た。


その様子がひどく動揺しているように見えたのは、俺の気のせい?


半分は期待…残りは…そんなわけないという気持ち。


だけど今の言葉に動揺するほど、あの時の彼女の気持ちも俺にあった…そう思いたかった。


あの火曜日の昼休み、5時間目が始まったはずの図書室から出てきた彼女を思い出した。


期待というよりも俺の願望、そうあってほしいと願う。


「慌て過ぎ…。」

「だって…一ノ瀬君が急に変なこと言うから。」

「そんなに変なこと言ったかな、俺?」

「…変だよ。もう酔っちゃった?」


困ったように彼女が力なく笑った。

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