最後の恋 【番外編: 礼央目線】
彼女の背中を見送りながら電話に出た。


「もしもし」

『あぁ、俺俺。』


電話の向こうのその男は、いつものように明るい声だった。


これから話す内容と声のテンションが若干釣り合っていない気がしたが、今は手短に済ませたかった俺は用件だけを伝えると電話を切った。


急いで車を降りて杏奈の部屋へ向かうと、部屋の前にまだ彼女が立っているのが見えた。


だけど、どこか様子がおかしかった。


何かに怯えているような彼女の肩越しに、あるものが見えた。


彼女を先に一人で行かせたことを悔やむ。


明るくても、もっと慎重になるべきだったのに。


「杏奈…俺だよ。もう大丈夫だから。」


彼女を優しく抱きしめると、俺の腕の中で彼女が震え泣いているのが分かった。


< 75 / 102 >

この作品をシェア

pagetop