最後の恋 【番外編: 礼央目線】
今はまだ顔の見えないその男に、激しい憤りを感じた。


好きな女に…恐怖しか与えられないなんて…そんなの愛でもなんでもない。


ただの身勝手な自己満足だ。


絶対に正体を暴いてやる…


ドアに貼られたその封筒を剥がすとポケットに突っ込んだ。


「1人で行かせてごめん。もう大丈夫だから、荷物を取って早く行こう。」


大きな旅行用のカバンに衣類などを入れていく。


仕事用のスーツや靴なども幾つか持ち出した。


「後で足りないものがあったらその都度買い足せばいいよ。」

「うん、とりあえずこれだけあれば大丈夫だと思うから。」

「じゃ、行こう。」


最後に戸締りとガスの元栓を閉めてから、俺たちはアパートを出た。


俺のマンションに戻ってくると杏奈も安心したのか少しだけ笑顔が見えた。


俺は寝室の隣の部屋のドアを開けるととりあえず彼女の荷物をその部屋に入れた。
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