小悪魔なキミに恋しちゃいました。


「あれ?ない……」



「ん?どうしたの、茉莉ちゃん」



午後の授業が始まった時、午前中はあったはずの消しゴムが見当たらない。



……なんで?



つい最近変えたばかりの消しゴムだから、転がってなくなるってことは無いはずなんだけど。



机の下や中を見ても、カバンの中や筆箱を漁っても見当たらない。



どっかに落としてきちゃったかな?



4時間目は移動教室だったし。



「はい、使えば」



一通りの会話を聞いていたのか、後ろからずっと現れる手のひら。



その上には、消しゴムが一つ乗っていた。



「いいの?」



「何のために渡してると思ってんの。ほら、早く取らないとまた先生に目つけられるよ」



それは嫌だと、素直に消しゴムを受け取り、お礼を言った。



「よかったね」



大和くんが隣で、そう口を動かす。



「うん。大和くんもありがとう」



私も口パクでそう返した。



消しゴムを貸してくれたのは結城くんだけど、大和くんも一緒に探してくれたから。



……それにしても、私の消しゴムどこ行っちゃったんだろう。


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