木村先生と和也君
木村先生の挨拶
「え!あの中学生とほんとに付き合うことになったの?」

「いや,和也君は今年から高校生になんだけどね・・・」


私,木村文香(きむらあやか)は塾講師をしている。

この春から,元生徒だった和也(かずや)君(高校1年生)とお付き合いすることになった。

久し振りに親友の京(きょう)ちゃんに電話して,報告するとかなりびっくりされた。

和也君に告白されたことは,だいぶ前に報告していたが,まさか付き合うことになるとは思っていなかったのだろう。

「高校生ってアウトでしょ。文香,今年で31歳だよね。このあいだも芸能人の,誰だっけ?高校生と猥褻な行為をしたとかでニュースになってたじゃん」

「うっ,そんな猥褻な行為なんて・・・」

もちろん猥褻な行為なんてしていないけど,キスはしてしまった・・・

「それで,逮捕されないために,今度和也君の家に挨拶に行くことになった・・・」

「挨拶!?」

「親の同意があれば未成年と交際しても逮捕されないらしいんだ」

「あんた・・・逮捕されるとかされないとか,ほんとギリギリのラインで生きてるね」

なんだか京ちゃんの声が呆れている。

私だってこんなことになるとは想像もしてなかったんだよ・・・

「普通の親なら挨拶にこられても困るだけだと思うけど。」

確かにその通りだ。

「文香に彼氏ができたと思ったらまさか高校生とはねぇ。ま,おもしろいからいいけど。ほんと逮捕だけはされないように気をつけてね~」

他人事だからってほんとのんきだな。

当事者である私は,今からガクブルしている。

初めてのお家デートって,もっと胸がときめくものだと思ってたのに!
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