全ての記憶を《写真》に込めて

文化祭と恋の予感

私が倒れてから時が過ぎるのは早くて、もう文化祭の季節となった。
いや、そう早くないのかもしれないけど。

「文化祭って、何やるの?」

行事に参加してなかったから、よく分からない。
しかも、何をやるかは私が寝込んでいる時に決まったらしくて。

「音楽室でカフェをやるんだよ!明智先生が一番いい部屋を勝ち取ってくれたみたい」
音楽室は家庭科室の隣にある。
ここの高校では一番いい教室だ。


「何話してんだ?彩月」

「あ、お兄ちゃん!」
「やほやほ」
「やほやほ、じゃなくて今暇なの?」
「まぁな〜、俺優秀だから」

そうやっておちゃらけで見えるお兄ちゃんは本当に優秀だった。

「あ、彩月に言うの忘れてたけど、文化祭終わったら俺また病院探ししてくるぜ」

「え、ど、どうして?」

「だって、彩月の病気直したいからさ」

私のために。
そんなに頼ってていいのかな…。

「あと、純粋に医者について学びたいから」
俺実は教師希望じゃなくて医者希望だから、と笑って話すお兄ちゃん。

「えっ、嘉月さん医者希望だったんですね!」
「まぁね!」

茉莉ちゃんとお兄ちゃんはまた話で盛り上がってしまった。

文化祭かぁ。
楽しみだなぁ。

「ふふっ」

「何笑ってるの、彩月ちゃん」
「一人で笑ってると怖いんだけど」

「翔くんと晴くん!文化祭カフェやるんだって!」
「俺は同じクラスだから知ってるし」
「俺んとこはコンテスト開催するんだよね〜」

え、コンテスト?


「あ、あんた二組代表でコンテスト出ることになってるから」

晴くんから出た言葉に驚く。

「え、」

聞いてないよ。
え、待って待って。

「そうだった!彩月可愛いからみんな文句なしで決まったよ!」

「嘘っ!」
そ、そんな大役任されていいの!?

「あ、和久井くんも一緒に出るみたいだよ」
お世話役としてね、と晴くんに確かめる。

「ほ、本当?」
「思い出作り、大事でしょ」
俺も出てあげるんだからさ、感謝してよ、と。

「待って、なんのコンテスト?」

「クラスでどれだけグリム童話を再現できるかっていうコンテスト」

「何それ…っ」

そんなコンテストあるの?


「まぁ、簡単に言うとうちのクラスではアリスのお話を二人で再現するんだよ〜って言っても衣装を着てみんなの前に出るだけだけどね」

「俺も彩月のアリスが見たい!!」
「お、お兄ちゃんまで!」

でも、なんか楽しそうかも…….。

「や、やるからには頑張るね!」

「俺も出るんだからさ、もちろん狙うのは優勝だよねぇ」

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