全ての記憶を《写真》に込めて


目が覚めて初めて見たのは焦っているお母さんの顔だった。

「彩月っ!目が、覚めたのね……」

「お母さん、どうしたの?」

ちょっと眠っていただけなのに。
そう、少しだけ…。

「もう2週間も目を覚まさなかったのよっ」
絋ちゃん先生呼んで、と私の体を起こしながらお父さんに呼びかける。

「頭、もう痛くない?」
「え…、うん」


すると、大きな不安に襲われた。


「お母さん、私、ちゃんと覚えてるよね…?」

大丈夫。
晴くんだって、茉莉ちゃんだって、翔くんだって覚えてる。

大丈夫、大丈夫と、何度も心の中で呟く。


「すみません、失礼します」

入ってきたのは病院の先生だった。




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