愛されたいのはお互い様で…。

【紫、そこに居ろ】

…え、務…。何、いきなり。
居ろって言われても。…どうして。急にそんな事。ここ…何かあるの?見回して見た。

【不審者みたいに見られるから嫌よ…】

【不審者でもなんでもいいから居ろ。いいか、そこから動くな】

あ、…。もう。そんな、勝手な事。居るこっちの身にもなってよね。

【こっちにはこっちの都合があるの…ここにずっと居て、もし見えたらいけないモノが見えたらどうするのよ。解らないんだからね。それに二人っきりとかになったら怖いでしょ?】

…は?

【おい、どこに居るんだ?】

【え?、はっ?そこに居ろ、動くなって言ったのはそっちでしょ?場所も知らないで言ってるの?】

【だからどこに居る】

【エレベーターよ…】

【は?】

【だから。エレベーターの中よ。そこに居ろって言うから、止まっても降りないでを繰り返してる…。乗って来る人が、あ、今もだけど、降りないんですかとか、言って来るし。夜遅いし…もう、…こんなの繰り返してたら完全に不審者よ?これ】

は…ハハハ。相変わらず面白いやつだな。…そこは降りて待つだろ、普通。

【馬鹿だな。上がって降りてていいんだ。部屋の前に居て…いや、そのまま居ろ】

…はあ?どうしろって…解んない。ここに居ればいいのね。そうよね?

「紫!」

開きっぱなしのドアに手を掛けられた。

「あ。…務。もう…何これ…」

はあはあ言ってる。苦しそう。凄く走ったんだ。

「紫も…来てたんだな。俺も、行ってたんだ、紫の部屋に」

「…務…」

「とにかく、許可を取ってくれ」

外に出された。

「え?」

「靴屋に…紫が俺の部屋に入ってもいいかって」

…務。

「…解った。聞いてみるから」
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