愛されたいのはお互い様で…。

「紫…」

務が正座をした。
いや、何、急に…。私も正座をした。

「俺は紫の事を傷つけた。本当にごめん。この通りだ。一番の後悔だ。言葉で紫を傷つけた。
そのせいで、本当の不信にさせてしまった。…最悪だ」

頭をつけられた。正座からの土下座だ。

「…務、ちょっと、止めて。こんなのは無しだよ。務の言葉は…流石に、あの時は…私の言ってる事を全くとり合ってくれなかったから、一気に沸点を越えさせられたけど…。あれはそのまま私の言った事に務が答えたって事だったから。
何故だったか聞いたし…いいの。事実も解ったし。私の言ってた事は嘘じゃなかったって信じてくれた。
私だってふらふらしてたって事だから…よく無かったんだよ…」

「それは…寂しくさせていたんだよ俺が。それに気がついてなかった。会う事も少なくて、深い話だってしてきてなくて。だからその事はいいんだ」

「…だからって、どこかふらふらしていい訳じゃ無いから…私は…、務には嫌な思いをさせてたから…」

「それは聞いて解決した話だからいいんだ。区切りはついてる話だ。
…紫、終わりは終わりで、それでもいいんだ。それが紫の心が決めた事で、今の俺達の答えって事になったんだから。二人同じ気持ちじゃなきゃ居られないんだ。
その上での話なんだ。
理屈としては、やり直すんじゃ無くて、…俺も紫もこの先、改めてお互いの存在を知って、それで惹かれるようなら、始まるって事もあるかも知れない。そうなったら始めたい。
紫はどう思う?そんな事は二度と無いと思うか?
紫は…今は考え難い状況だとは思うけど…。
もう、知り合いでいる事も止めてしまうか?
そうするなら、連絡先はお互いに消してしまおう。俺らは知らない同士になるんだ」

…。

「やり直すんじゃなくて、また始めるんじゃなくて、全くの知らない人から、出会うかも知れないって始め方なら、…消してしまった方がいいのかも知れない。
…こうして、部屋に入る事も…もう無いって事…。
場所は知ってるけど、…それも記憶から消さないといけないって事になるのよね…」
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