愛されたいのはお互い様で…。

「それって…どこで会ったって知らない人なんて…じゃあ、どうやって始めるの?
何か無ければ声も掛けられないって事でしょ?それだと、もう、一生知らない人になるかも知れないって事でしょ。
…連絡先を消して、知らない人になってなんて…出来る?普通、別れた人はするのか…。理屈では忘れる努力をするって事で、今までの事を無しにして過ごして行くのよね。それは、別れてもう二度と会いたくない者同士する事だよね。
それを望んで無いのに、連絡しなくなったって…、頭からも身体からも全て消さなくちゃいけないって…、簡単に出来る事なの?…。
嫌いになって、さよなら、って言った訳じゃないんだよ…」

別れてどれだけ経っても忘れられない事が未練なんだよ。
あれは…確かにメールでさようならと言われたけど、別れとは違うだろ…、言って見れば、口喧嘩みたいなものだよな。
だけど紫はそれを終わりだって決めてしまったじゃないか。…そうだろ?

終わりでもいいけど、また始められたらいいって言うのは、完全な俺の期待なんだ。
別れたくないと言えばきっと大丈夫だ。この場で始められる。靴屋が居ても今なら大丈夫、取り戻せる。紫の気持ちは靴屋で完全には埋められていない。まだ、この人でいいかなくらいの揺れだ。
だけど別れたくないと言えない。俺の言った言葉が酷い言葉で、逆上させるほど、紫を傷つけたからだ。
それを置いといて、終わりなんてないとは、俺からは言えないんだ。
俺は紫の事を好きだと言ってある。
紫は…プツっと何かが切れて冷めてしまった。今はその状態なんだ。
こうなっては、気持ちは戻らないだろう…。だから改めて始める方がいい。同じ人間をまた好きになるって事が理屈抜きで出来るならだ。


「①と②…形にはこだわらない、基本は一緒に居たいから…」

「…え?」

「③、やりたいと思う事、辞める必要はないと思う。④、愛しい人との子供は欲しいと思ってしまう。⑤、状況に合った起こし方なら、甘くもあっさりにもなる。⑥、聞きたい事を聞く事、言っておきたい事を言う事は面倒臭い事ではない、むしろ大事な事だ。⑦、どんな人物か解ってる人、好きな人の我が儘は可愛いと思う。
以上だ。
今後の参考っていうか、始まる事があったら、俺はこんな考え方をする男だ。…合わないなら、最初から無理だと思えば始まる事も無いって事だ。今更答えて説明するって無いよな。
話は…終わりだ。
そろそろ送って行くよ。…紫さん…」

務…。紫さんなんて…一度も呼ばれた事無かった…。最初から紫だった。
これからはこういう事だ…。
これからも…会う事、始まる事がなければ名前さえも呼ばれ無いって事だ。

「はい、…では帰ります」

「あ、ここで終わりじゃなくて、部屋に送ってから…、それで終わりでいいか。じゃなきゃ送れない」

「解った、じゃあ、送って?務」

「ああ」
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