愛されたいのはお互い様で…。
…あっ。
両手で包むようにして箱を持ち、決められた道をただ歩かされているみたいにして通路を歩いていたら、部屋の前にガーベラの花束があるのが見えた。
ベースは白。…ほぼ白。その中にピンク、赤、黄、オレンジがぽつぽつと散りばめられていた…。どうして?…今日、何故?
抱え上げて見た。大きな花束だ…。
また、何もない。これでは誰が置いたのかも解らない。
ここが本当に置きたかった場所かもまた定かではない。
…フ、…ずっと間違えて置き続けているのね、きっと…。そうに違いないよ…。
取り敢えず、いつものように持って入って水に浸けた。
…。
【今、何事もなく、部屋に戻りました】
約束は守って帰って来た事、伝えておかないと心配しているだろうから。
【間違ってますよ】
…え?
【今の紫さんが帰って来る部屋はそこではありませんよ?
今夜、一人で居てはいけません。もう迎えに出てますから、直ぐ着きます】
鍵を掛けて、下に降りた。さっきまで務が居たのに…。
「紫さ〜ん」
え、伊住さん。もう居る…。
「…紫さん。大丈夫ですか?泣きたくなった時に一人で居てはいけません」
え?
「伊住さん、私…」
頷いて背中に手を当てられた。
「取り敢えず、帰りましょう。ずっと一緒に居ますから」
…伊住さん。
「ちゃんと話は出来たのですか?」
「…はい」
「…はぁ。これでやっとですよ?」
「え?」
「言葉にして、話しをして、それで終れるのです。そして、始まりなのでしょ?」
「え?」
「ん?…終わりは、また新しい始まりでもありますよ」
…これは、伊住さんとの事でもあるし、考え方によれば、務との事も、当て嵌まる言い方だ。
「賑やかにお祝いする日は別の日にします。でも、誕生日ですね、おめでとうは言わせてくださいね」
抱きしめられた。
…はぁ、とても、気持ちを読む人だ。…今、そんな気分にはなれないって。
「…誕生日、おめでとうございます、紫さん」
「…有難うございます」