愛されたいのはお互い様で…。

プレゼントを別れ際に務に渡された私は、誕生日だからおめでとう、なんて言われても、と思った。…務、渡すのはずるいよ…。話していた事も、見たら考えてしまうから。

「…伊住さん、…」

「はい?」

「務に初めて会った時…、私は、終わりになった人との事、話せませんでした。この人とどうなっていくのか…私の事も何も知らない、だけどどういう風に見られてしまうのか、気にしたのだと思います。知らなかったとはいえ、私は…状況は不倫をしてた訳ですから。
…初めからこの人に終わりだと言われたら終わりだって、…諦めの気持ちはどこかにずっと持ち続けていたのかも知れません。不倫の事、話せたのは本当にずっとずっと後の事なんです…」

「はい」

「伊住さんには、…務との事、…疑ってしまうとか、駄目な考え方をしてしまうとか、言ってはいけないと思っているのに、何でも話してしまって、…終わった事だって…」

「…紫さん。務さんとアったのは、まさにその日が初対面の、数時間の事じゃないですか、…まだどんな人かなんて見た目しか解らない。…だから惹かれた気持ちも大いにあったと思います。
そんな時に、先に関係を持って好きだと言われたら、中々話せるモノではないと思います。失っていい、今夜だけでいいと思った人なら、さらっと詳しく話せていたのではないですか?でも、…そうではなかった。私が推し量っても…それは解りませんが。
私の場合は…話すにしても、掴めない人…、不思議な人だと、紫さんが多少なりとも私を知ってからの事です。
まだ好きとか、つき合っているとかはない相手です。どうなるか心配のない相手です。
だから、戸惑いはあっても話せた。
だから、それぞれなんですよ。状況が違うのですから比べてはいけません。
…でも、私を少しひいき目に言ってくれようとしたところは嬉しかったですよ」

「私、伊住さんに惹かれてはいけない、注意しなくちゃとか、ずっとそんな事ばかり、気にするようになって…それなのに…」

「…自分を責めないで貰えますか?惹かれさせようと少しずつ紫さんに入り込んで行ったのは私ですから。
私は紫さんが好きです。それだけです…。
紫さんはどうしたいか、私にもう言ってます。また増えていませんか?言っておきたい事が出来てるなら言ってくださいね。それは約束事ですよ?一日一日、心は動いているのですから」

「始まったら始まったでいいのですか?」

誰とは言わない曖昧な聞き方だ。

「はい。…刹那主義でいいのですよ?」

…はぁ。

「楽になりましたか?」

「はい」

「今夜、お泊りですよ?いいですね?」

「…はい」

「はぁ…本当に?……はぁ、良かった」

「伊住さん?」

「もう、私は今日でフラれる覚悟でしたから…はぁ」

え?
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