愛されたいのはお互い様で…。
並んで横になった。
………伊住さん?…このまま…眠ってしまうのだろうか。そうか…そうだよね。…私ったら。
「…違いますよ」
…え?
「私は…ちょっと待っていただけです。…紫さんから来ていただけるならと…」
「伊住さん…」
「私の好きは、紫さんに、これでもか、ってくらい見えていると思いますが、紫さんの好きは、もっと見せて欲しいのです。特に今夜のような時には…です」
…あ、…こういう事だ。私はちっとも…務とも受け身ばかりで、ずっと好きを表現してなかったかも知れない…。私の心が伊住さんに惹かれている事、雰囲気だけでは無く、伝えなきゃ解らない。
「…伊住さん」
「だからと言って、無理をする必要はありませんよ。…心のままでいいですから。紫さんが今、本当は複雑で空虚だって事、私は知ってて言ってますから。…ずるくて意地悪でしょ?…それでも貴女に私を植え付けたいと思っているのです。今夜は寝ましょう。…おやすみなさい」
…伊住さんは身体を捻った。背中を向けられた。
「私…私みたいな女だからって、…思ったから、…」
向けられていた背中に身体を寄せ、片手を背に当て片腕を回した。
「…今更ですが…こうしてしまうと、節操がない女だと…思われたくないのもあるんです…」
手を握られた。
「…今夜貴女は流されなかった。務さんと、務さんの部屋で色々話をしていたら、沸き上がってくるモノ…、複雑な思いが何度も押し寄せたと思うのです。でも、…何も無く、部屋に帰って来た。そうですよね?
終わらせたばかりの二人です。何かあっても仕方ない…私はそう思っていました。嫌いではない終わり。終わりも始まりも入り混じっているからです。でも何も無かった。欲しかった言葉も、です。…そうですよね?」
「……はい」
「はぁ……私がどれだけ、…気持ちが高ぶっているか解りますか?紫さんを部屋に迎えに行った時だって。こうして居ることだって…、ぎりぎりなんですよ?私の堰はとうに切れているのです。溺愛中だと言っています」
身体を動かして振り向いた。
「紫さんからキスをしてくれますか…」
…出来なければいいのですよ、伊住さんがそう言っているようだった。
伊住さんの胸に手を乗せ、身体を伸ばすようにして唇を触れさせた。
「あぁ…、紫さん…」
…あ。伊住さんの腕が背中に回され、引き上げるようにして唇が触れ直された。離れないように頭を押さえられ、背中を強く抱かれた。合わされた唇は貪るように食まれた。…ん、…こんな…苦しいほど熱いのは無かった。…燃えるような激情がここにはっきりある。
そのまま返され下にされた。
見つめられ顔に手が触れ、更に熱く唇が合わされた。角度を変えながら、深く深く探られる。息が上手く繋げない。
こんな伊住さんは知らない。