愛されたいのはお互い様で…。
「もっと、…もっと後になるんじゃなかったの?」
「ん?」
「…私達の決めた事。一旦、知らない者同士になって、普段に戻って…それで…それからでしょ?」
「駄目なんだ」
「え?」
「それじゃあ駄目だったんだよ。始めから」
「そんな事…解ってた事じゃない?」
「え?」
「お互いに気持ちはあったんだよ?…嫌いでさよならって言った訳じゃないって…。それを、改めて、話して、…終わらせようってしたんじゃない。
それで…、だったらその瞬間から始めたって良かったんじゃない?好きだって言って。
…好きなら、傷つけ合う事だってある。私達は、何も無さ過ぎたのよ。それだけ、会って無かった、話してなかったって事…。
だから、人に言わせたら、そんな事で終わりにするの?って事で終わりにした。私は…ダメージに弱かっただけだと思う。
私だって、言える程人間が出来てないから…。務に求めるばっかりで、…だったら、好きなんだから全てを信じろって話よね。
…ふぅ、…もっと務の部屋に行く回数が多くて、…朝まで居る事も、もっとあったら…、夏希さんに入られる隙だって無かったはずだし。微妙な部屋の変化に気がついたかも知れなかったのよ…。鍵だって務から貰ってたら良かったかもね。
自分でややこしくするばかりで、元はシンプルな事だった…。
好きなら好きを…素直ににいつも現していたら良かっただけ。好きを貰ってばかりでいてはいけなかったって事。務を信じていたら良かっただけの事。
そうしていれば、何を見ても、何を知らなくても、疑う余地なんて生まれなかった。…ごめんね。いつも自分本意で」
「これは…、これが終わりって事か…本当の意味で、終わりって事か。もう、始まる事も無いって事か」
紫の心には、あの男がもう入り込み始めているのもある…。
…務。
「出よう」
「え?」
「外で話そう。来る途中、公園があったよな。そこに行こう」
「え?」
「紫の部屋にだって、俺の部屋にだって行けない。いや…行こうとしたら強引に行ける。だけど、…酔った紫を連れて帰った時みたいな強引な行動は出来ない、…俺は弱虫になってしまった。そんな事をしたら…紫が…本当に離れていく」
…務。