愛されたいのはお互い様で…。
そこに誰も絡んでなかったら大丈夫だったのよ。何を内緒に進めていても。
私が夏希さんの存在を感じて…疑ったから…。
「…紫、諦めの悪い男だと思って、…呆れてもいい、聞いて欲しい」
「…はい」
「人は言うよな…。前の恋を忘れるには新しい恋を始めたらいいって。俺にはそれは当て嵌まらない。前の恋も新しい恋も無い。全てが紫なんだ」
…務。
「出会って、もう何年も経ってる…。今だけの話じゃない…。この先、違う人となんて無い。…言い方を変えたって同じだ。
前の恋も紫。新しい恋だって紫だ…俺は…」
「務…」
「これを、さようならと言われたその時にちゃんと言うべきだったよ」
「……う、ん」
「はぁ、…そこは、務!って言って、…飛び込んでは…来ないよな…」
「…うん」
…もう…飛び込んではいけない…。行ってはいけない。…ごめんなさい。
「あ、ごめんて言うなよ。言っただろ?諦めの悪い奴だって。ずっと未練たらたらなんだからな」
「…うん」
「…今は、紫の心に伊住さんがもう居る。それはどうしようもないんだ。…自然に惹かれてしまったんだから。
じわじわと囚われた心は、中々簡単に離れる事はない。…離れてもいけない…。
だから、俺も見習う」
「え?」
「俺もじわじわと紫にまた入り込む。攻める自信は出来た。もう知らない人の振りをする事は無くなった。終わった者同士になったんだからな。そこは、それでいいよな?理屈は合ってる」
「う、ん」
「あの人は紫にこんな事をしていた…」
…え?務…?……あ。
「俺とつき合っている紫なのに…。紫を、こんな風に抱きしめていただろ?…」
務に抱きしめられていた。
「…それに、キスだってされたって、紫は言ってた…」
「それはそうだったけど…駄目よ?」
「解ってる。…まだそれは早い。今はキスはしないから大丈夫だ。確認しただけだ。隙はあるって事だよ、俺は紫の事なら知ってる。俺の紫だったから。あ、物みたいに言ってるんじゃないぞ。好き合っていたって意味だ」
…務。
「……帰ろうか、送るから」
「…うん」
「手は…繋げないか…」
「うん、繋がない」
「…くっそ〜」
「フフ。…務、…あまり、揺らさないでね…」
「そんな事、はいって言えるか…」
「…うん」
何だか同士みたいになっちゃった。まだ好きなのに…。