愛されたいのはお互い様で…。

暫く、何事もなく、甘く平穏な日々を過ごしていた。何事もなくとは、務に突然会う事もなく、という事も含まれていた。

それは突然だった。
晩御飯の用意をしていた時だった。
惣菜はもう出来ていた。あとはご飯が炊き上がればOK。
立ち上る蒸気を見ていたら、何だかムカムカして来た。気持ち悪い…何だろう。何か変な物、摘んだかな。こんなところで戻してはいけないと洗面所に走った。ただえづくばかりだった。
何も知らなかった私は、てっきり、甘い物の食べ過ぎだとか、そんな事ばかりを考えていた。残暑もまだある。少々暑さにやられているのかも知れないとも思った。横になっていれば楽になるだろうと。

伊住さんが部屋に戻って来た。
いつもなら覗きに行って一緒に片付けるのだけど。
ソファーにだらっと座っている私を見て、伊住さんはもの凄く慌てた。

「どうしました?具合が悪いのですか?」

「大丈夫です、何だか、ちょっと怠かっただけです。ごめんなさい、呼びに行かなくて」

上手く説明が出来なかった。ただ心配はさせたくなかった。

「それはいいのですよ。大丈夫なのですか?」

「はい、大丈夫です。ご飯、出来てます、さあ、食べましょう。
今日もお疲れ様でした」

テーブルに移動して席についた。

「はい、紫さんもお疲れ様でした、
頂きます」

「はい、頂きます」


結局ご飯はあまり進まなかった。箸で摘んではみるのだが、あまり口に運びたくない。
別に無理に食べる事もない。お腹が空いたら食べられる物を何か摘めばいい。
そう思っていた。

後片付けをして、軽く流す程度にシャワーを浴びた。
今日は一緒にお風呂に入る事を遠慮してくれて、先にベッドで休んでいた伊住さんに、寄り添うように横になった。

「紫さん?具合はどうです?」

「はい、もう、いつも通り、元気ですよ」

「あぁ、それなら良かった。無理はしないでくださいね、いいですか?」

「はい」

…。

「伊住さん…」

「おや、…どうしました」

何だか甘えたように伊住さんに腕を回した。

「…何だか、…して欲しくて」

自分でもよく解らない。だけど、…これが本能のままなのかも知れない。恥ずかしさも忘れて、そんな大胆な事を言ってしまっていた。

「あ。紫さんからなんて。とても嬉しいのですが…でも今夜は…いけません、無理をしない方がいいです」

頭を抱き込むように撫でてくれた。

「…無理はしてないです…抱いて欲しくて」

…。

「…んん、弱りましたね…、ん…解りました。私も駄目ですね、弱いですね。紫さんに甘えられては…拒否できません。では…少しだけですよ?」

いつものように沢山キスをされた。唇をあわせる度、いつもより、より感じているのが解った。もう…身体ごと蕩けていた。パジャマを脱がされ、甘く触れられる度、敏感に感じ、声をあげた…。何だろう…私、知らない間に凄くエロくなったのだろうか…、堪らなく感じてしまう…。

「…ん、紫…凄く中が…熱い…はぁ…堪らない…」

私だって凄く情熱的な気持ちになってる。
やっぱり、何か…違う。
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