愛されたいのはお互い様で…。


そもそも仕事も出来て、いい男なんて…初めからずっと不安材料だらけなのよ。
きっかけはきっかけとして…私とつき合いたいと言ったのは務で、一目惚れだと言ったのも務…。
連絡先を教えても、今夜だけかも知れない、実際連絡があるかどうかも解らなかったのに、務は日を空ける事無く連絡して来た。
あんな始まり…直ぐに終わってしまうかも知れない…そう想定していたけど…、つき合いは長いものになっている…。



「…はぁ」

「どうした?」

今夜はリベンジだ。この間ドタキャンになったご飯に、別の店だが来ていた。

「ん…務の事、考えてたの」

思いもよらない言葉だったのだろう…きょとんとしているのが解った。

「…どうしたんだ一緒に居るのに…何か…真面目な話でもあるのか?」

どうやら、悪い事でも想像したようだ。

「ううん、…ただ漠然と」

「…漠然と何だ」

…何か焦ってる?何か言われると思ってるのかな。

「思い出してたの。務は…何で一目惚れだなんて言ったんだろうって。言ってみたら、酔い潰れただらしない状態の私を見てる訳だし…。理由はどうでも、アルコールに逃げて…出来ないって解っていても、やり切れない悔しさみたいなモノを無くしてしまいたくて飲んで、酔ってた…そんな私だよ?
なのに、後腐れ無いからいいだろとか言って…挙げ句…シたくせに…好きだからつき合おうなんて言って…」

…。

「はぁ…どうしたんだよ…そんな昔の事、今更蒸し返すような事…。…ふぅ。あの時は。
…ちらっと見て、…気怠そうな紫にドキっとした。言った通り、一目惚れだった。…いいと思わなきゃ連れて帰らない。
グラスを取られて飲まれようが…酔い潰れていようが、興味がなければ放置する時は放置するよ。
そのままで帰したくなかったから、連絡先は何としても知りたかった。それに…酔っていたとは言え、…紫とシて…良かった…。素面でもない、あんな場面で、余計面と向かってシようなんて言うのは、言えないだろ?…だから、後腐れないだろ、なんて言ったんだ。…好きになったんだ。そのまま終わらせる訳が無いだろ」

…務。

務はぐっとシャンパンを飲み干した。

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