愛されたいのはお互い様で…。


「夜なのに…暑いね…」

「あぁ、夏だし…」

「うん。…ねえ?」

「ん?」

「シャワー、したいね」

「また…更に誘惑か?」

「え?また?何?…あのね、暑いからよ?汗かいたり引いたり、この時期は本当、汗かきの私には辛いんだから…。お化粧だって…、暑いのになんで一塗りしなくちゃいけないのか…意味解んないでしょ…」

「フ、そうか…、フ、大変だよな女の人は。じゃあ…急いで帰るか、シャワーしに」

…え?軽く駆け出した。

「そんな…急がなくても…」

「どうせ汗はもうかいてるんだ。少し走ってまた汗かいても同じだ。洗い流して、な〜んにも無い状態で、真っ裸でエアコンの効いた中、転がりたいだろ?」

ベッドにばふって事かな。

「風邪ひいちゃうね…気持ち良くてそのまま寝ちゃいそうだから」

「一人ならな」

「…え?帰るって、うちに送って行くって事じゃなかったの?」

「そうだけど…そうだけど違うよ…全く……天然か?別に、帰るのはどっちの部屋でもいい。ただ、どっちにしても一人じゃないって事だ。今夜、じゃあなって、それは無くないか?」

「…あ、雰囲気?」

「あのなぁ…フ、全く…ムードもへったくれも無いな…。腕、店で握って来ただろ?」

「え?」

「あー?あれは…違ったのか?…はぁ…何だ、誘ったんじゃなかったのか?…俺はてっきり、その気なんだって。だから早く帰りたいのかと思ったんだ。まあ…もうそれはどうでもいいよ。で?どっちに帰る?俺はどっちでも構わない」

「じゃあ、務の部屋…」

「その根拠は?」

「えっ、いきなり何それ」

少しスピードが落ちて早足程度になっていた。

「俺の部屋がいいって決めた理由、はい」

「んー…ドキドキするから、…かな。ちょっと務、早い…」

務の部屋だと思って入って、微かに務の匂いがして、…務が使っているベッドに寝るから、かな。…本当にドキドキしてきた。

「あー、何の想像?今、なんか考えてただろ?」

「えー、んー、務の素敵さ加減?」

「何じゃそりゃ」

「フフ…務の匂いとか、よ」

「…エッロ」

「そうよ。務の部屋を想像して、ドキドキする事、考えてたの。だって、そうさせるように、務が質問なんかするからでしょ?」

「いやいや、質問はしても、想像しろとは言ってない。紫が勝手にしたんだろ。…まあ、いいさ、想像以上に…色々応えなきゃな…」

あ、…もう、…何よもう。今夜は務だってちょっと違う。誘ったと思わせたからかな。

突然だ。繋いだ手を引っぱられて路地に引き込まれた。両手が顔を包み唇を重ねると、腰を抱かれて食まれた。

「フ…、部屋までもたない…店ので堪らなくなってるんだ。紫…」

人気が無いからって、こんなところでこんな…キスなんて…有り得ない。唇が首に触れた。チクッとした。これ以上大変な事になる前に止めなきゃ。

「あ…もう、務、駄目よ。…こんなところで。もう…ちょっと、酔っ払い…エロおや、ん…務…お願い駄目だから」

服の上から胸に手が触れた。

「…黙、れ。今夜は紫が誘ったんだ…」

…もう。だから…誘ったって思ったのは務だからね…。
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