愛されたいのはお互い様で…。
「ドキドキした瞬間て無かったか?」
「え?……んー。それはあった…かも」
「おい…」
「あ、大した事にじゃないの。ギャップによ?話し方がね、言葉遣いが一瞬砕けた事があったから、それによ?ドキドキっていうか、それだけ」
「はぁ…なんで会った事も無い靴屋に妬かなきゃいけないんだか…」
「え?」
「ん?何でもないよ…」
明るい時間だからといって安全て事も無い。どんな店も疑えばきりが無い。そんなのは解ってる。
今のご時世、看板とは違う仕事をしてるかも知れないんだから…。男の店で一対一なんて危ないだろ。
店だからな…客側に警戒が無いのは仕方ない事なんだけど…。はぁ。世の中、見えてるモノがその通りとは限らないからな…。心配したらきりがないのは解ってるけど。
「務?」
「…何でもない、心配してるだけだ」
頭を抱いた。俺がこんなにヤキモチ妬きだとは自分でも思わなかった。取られたくないと思ったからか。それだけ紫の事が好きで堪らないという事だ…。それがなかったらどうなんだ。何だか解からない人物には妬くだろ。
務…今なら聞けるかも。
「…ねえ?一個前の駄目になったご飯。本当はあの地中海料理の店にあの日居たでしょ。私が、見えないモノ、見えた事ある?って聞いたのは、そこに居るはずの無い務を見たからなの。あれは、あそこに居たのは仕事だったって事なんだよね?詳しい事は務の仕事の事だから知らなくていいの…。私との約束をキャンセルしたのは、仕事で、人と一緒だったって事よね?」
…。
「…務?」
違うの?え……どうなの?…。この間は何を考えてるの?言い訳?