愛されたいのはお互い様で…。


「遠慮みたいなのとは違うの。なんて言うか、聞かなくても大丈夫って思ってるから、聞かなくて…。でも、本当の事は聞かなきゃ解らなくて…。
どういう風に言ったらいいか解らないけど、聞こうとしたら聞けるの」

「んー、まぁ、要は、聞けばいいって事だよ。一々聞くと、信じてないみたいに思われるかもとか、思うからだよ。だから聞けなくなるんだ。解らないんだから聞けばいいんだよ」

「そうなんだけどね…」

「私は何も聞きません、大丈夫なんだから、でも、本当はどうなんだろ…て事ばっかりの繰り返しになって、自滅したらどうする?勝手に、信じられなくなったって、…一方的に終わりにしようって、紫が言うつもりか?」

…もしかしたらなってたのかな。

「別に、器のでかい女にならなくていいだろ?何もかもストレートに表現した方が解りやすい。間違った感情で思い込みをされるのは困る」

…そうなのよね。

「うん、解った」

「そうなるとだな…んん。ほぼ時間通りに店の前を通っていたらしい紫は、長引きそうな仕事っていうのは無かったって事になるよな。それとも、あれから、思ったよりももの凄〜く早く終わったって事か?」

顔を少し持ち上げられて目線を合わせると、ん?と問い詰められた。要点を聞き逃してないのね、…バレちゃった。

「それは……務が無理になったって言ったから、務だけ来れないっていう、気持ちの負担がちょっとでも軽くなればいいかなと思って…。私も仕事が終わらないって言ったら気が楽かなって…嘘をついて務に合わせたの…」

…ごめんなさい。

「俺は庇われたって事か。そんなにメンタルが弱いと思われてるのか…」


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