愛されたいのはお互い様で…。
……あ、何、今の一瞬漂ったモノ。…一々店主の持つ雰囲気や言葉のニュアンスに反応してしまってはややこしい事になるかも知れない。よく解らなくても、そんな“何か”は感じる…。思い込みが激しいのかな。
とても商売上手だと思う。奥様方はこんなやりとりをされると堪らなくなるんじゃないだろうか。
「工房の方に行って貰えますか?採寸しますから」
「はい。…あ、…あの?」
「はい?」
「あ、すみません。この前の…あの部屋、お借りできますか?足を…洗わせてください。仕事終わりで来たので。…このままでは…すみません」
…恥ずかしい。エステにだって、足ツボマッサージにだって行った事が無い。人に足を見せて…触られるなんて。それが採寸の為でも、恥ずかしいし…その前に綺麗にするのはせめてものエチケットだ。
「…はい。どうぞ、使ってください。スリッパを出しますから、洗い終わったらそれを使ってください」
「…有難うございます」
カーテンを引くと、明かりを点けるスイッチの音がして、伊住さんは居なくなった。
…はぁ。仕事のパンプスを脱ぎ、中に入った。
ストッキングを穿いている事を今更ながら思い出した。
…私ったら、来るつもりだったんだから、会社で脱いでおけば良かった。
人に足を見せるとか、触られるとか、改めて考えると、ちょっと…艶めかしいかも。…嫌、考え過ぎ…。これは採寸なんだから。向こうだって仕事、ぺたぺた触る訳じゃないのよ?………変に想像しちゃった。
「紫さん?スリッパ置いておきますね」
「あ、うわ…はい」
いきなりのカーテン越しの声と、うっすらと映り動く影が、気を抜いていた私を思った以上にドキッとさせた。
「すみません、びっくりさせましたか?大丈夫?」
「は、はい、大丈夫です。ごめんなさい」
ふぅ…腰までたくし上げていたタイトスカートを慌てて一旦引き下げた。変な声をあげたら、返って失礼になる。
…はぁ。いきなり開けられる事はないと思っても、恥ずかしい格好の時に話し掛けられると、殊の外、心拍数が上がった。
スカートを上げないまま、ストッキングに手を掛けするすると脱いだ。…思えばここで脱ぐのって二度目だった。…そうだ。何故、今日に限って…その…改めて変な気になったんだろう。さっきの伊住さんの、何とも言えない雰囲気のせいかも…。
先にお湯で流した。またソープを借りて、足先から膝下辺りまで丁寧に洗った。泡を流し、最後にお水を掛けた。ひんやりして引き締まった感じ。さっぱりした…これで大丈夫。
…何だか。…ね。やっぱり、…何だか…。…考え過ぎか。