愛されたいのはお互い様で…。
膝掛を掛けてくれた。…あ。揃えていた足からスリッパが抜き取られた。
「紙を敷きますね。この上に足を乗せて頂いて足の形を書き取ります」
「あ、…はい」
「両足、書きますからね」
足首を握られ白い紙に乗せると輪郭を書いていく。
「…はい、こちらも」
足を替え、また掴まれると軽く押さえながら写し取っていく。
「はい、では足幅を計りますね」
黒いエプロンのポケットから短めのメジャーを取り出した。足の下を通し、紐を交差させると、数字を書き込んでいる。
「紫さんは、足幅、狭いですね…細い」
「はい…」
「甲高でもなければ…、偏平でも無い。土踏まずがある。しっかり運動をされてきた足のようだ。中々…、既製のヒールだと、土踏まずの部分で悩むでしょ?」
「はい、土踏まずの部分は隙間が多くなるんです…。私、昔、陸上をしていました」
肘を曲げ、腕を早く振って走る真似をした。
「ん?ハハ、そうでしたか。短距離かな…」
「はい。短距離と、たまに中距離。それに、ハードルとか。幅跳びも砲丸投げもしましたよ?」
「そうでしたか。それは多種ですね、器用だ」
「いいえ、やっていただけと言った方が正確です。成績は決して自慢出来るような程ではなかったですけど。単純に走る事が楽しかったです」
「…ふくらはぎが、短距離走をしていた名残ですかね。…カモシカのような脚ですね」
…つまり未だに筋肉があるって事。膝掛けをしていたが、少しだけ足を持ち上げられて下から話される事に、びっくりもしたがドキドキもしていた。
「…もう、走って無いですから、カモシカというのは…どうかと思います。元々それ程しなやかでも無いですから」
具体的な部位の話をされるのは恥ずかしい…。
「…では、歩き方がいいのでしょう。程よく筋肉があって、形の綺麗な膝下ですよ?」
「…それは、有難うございます」
「ちょっとこっちに…」
「はい?」
立ち上がって、何やら弾力のある目の詰まったスポンジのような物の上に立たされた。固いウレタン?
「これは?」
「足の裏、指、どこにどれだけ圧がかかっているのか調べます。中敷きで履き具合を調整しますから」
…なるほど。