愛されたいのはお互い様で…。

翌日、ある程度の時間迄は、もしかしたらを期待していた。
仕事も終わり、そろそろ帰ろうと片付けていた。多分、今日はもう無い。
たまには一人で行って見るのもいいかも知れない。そう思って地中海料理の店を訪れた。

連れ立ったお客さんでテーブルはほぼ埋まっていた。一人だからカウンターの奥の席を希望してみた。
どうぞと快く案内してくれた。
『珍しいですね、お一人で来て頂けるなんて…』と言われたが、そんな事を言われてもって感じだ。好き好んで一人で来た訳じゃない。…しいて言えば、晩御飯の為です。

取り分けて一人用に小振りの鍋で出してくれるパエリアとサラダを注文して、アルコールは止めてジンジャーエールをお願いした。色々な物を摘みたくても、二人なら注文可能だが、一人では…、務のそれ頂戴、って事も出来ない。

はぁ…、先にジンジャーエールを持って来て貰って、静かに一息入れていた。
飲む食べる以外に口を開く事が無いなんて…。一人は時間を持て余す。だからといって携帯を弄るのも…。

料理が運ばれて来て、女である事を差し引いても、一人で食べるとなると、さして時間の掛かるものでは無いと実感した。
んー、話をする相手が居ないと、というか、向かい合う人、隣り合う人が居ないと、こんなものなんだ…。ただ黙々と食べるだけ。

もう帰ろうと思った。
先に化粧室を使おうと、入り口脇にある通路を進んだ。

多分、それがどんな状況でも、私達は不思議と引き合う何かがあるのだろうと思った。何故か会ってしまうんだ…。

化粧室から戻り、会計を済ませ、従業員の男性にご馳走様ですと声を掛けてドアに手を掛けた。
見るつもりも無いはずなのに、何かに引かれるように用のない後ろのフロアに顔が向いた。

務が居た。
…ドッペルゲンガー、…そっくりさん、三つ子…どれでも無い事は解っていた。
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