愛されたいのはお互い様で…。
この部屋、入った時から何も違和感は無かった。二日と空けず来てる訳じゃないけど、特に引っ掛かる事は無かった。
洗面台の前に立って、身に覚えの無い歯ブラシがあるとか、務より長い髪の毛が落ちてたら、どんなに鈍感でも解るし…。
違和感があるとするなら、…それは、…務の匂い…だ。務の身体から香る匂い。
「…ねえ、務。務の部屋に来たらドキドキするからって前に言ったでしょ?…務の匂い、ドキドキするの。今日はね…はぁ、…違うドキドキに襲われてる」
キスはしない。だけど務を抱きしめた。
スーッと深く吸い込んだ。
「務…匂いがいつもと違う…」
「…紫」
一瞬務の身体が離れようとするのが解った。だけど離さなかった。
「私ね、最近、凄く性格が悪いの…。考え方も何だかドス黒くて。…ごめんね。勝手に思い込む癖がついちゃって、一から十まで話を聞かないと、全部悪い方にしか考えられなくなっちゃってるの。はぁ…ちょっと待ってね」
回していた腕を解いた。務にきちんと向いて座り直した。
「私、謝らないといけない事があるの。言い訳だけど…、自分からでは無いけど…、靴屋さんと、キス、しました。…二回」
自分の事も言わなきゃ務の事だって聞けない…。
「はぁあ?!」
え゙。何、そのマックスな怒りは。…え?…え゙?! そんなに怒れる立場なの?…私、はやまったの?
「紫、心配無いって、大丈夫だって言ったよな?それどういう事だ」
「待って、…待って。それは、務が心配するみたいに、私に隙があったからだったの。だからごめんね。ごめんなさい。…ごめんなさい」
…。
「…キス、だけだよな…」
「うん、…キスだけ」
「はぁぁ…。それでも嫌だ。絶対嫌だ」
務…、これは、務は白って事?じゃなきゃ、こんなにはならないよね?
「務?昨夜は、前に一緒だった仕事の女の人と一緒だったよね?お店で」
「ああ」
返事、躊躇なくした。
「あの人は、どういう人?」
「同じ会社の後輩だ」
「え?外部の仕事関係の人じゃ無かったの?」
私の思い込み?そういう風に思ってたんだけど。
「…違う」
ん?何、今の若干の溜め。