愛されたいのはお互い様で…。

女性は、お帰りなさいと言った。ごく自然に。
普通に考えたら、部屋に務はいないという事だ。
やはりどこか寄り道をしていたんだ。
…女性が部屋に居て、寄り道をする?来てるなら急いで帰るものじゃないの?帰ってたけど、何か使いを頼まれて…また出てた?
帰っていたけど、…お風呂に入っていて、その時にたまたま私が来たから…、私だと認識した女性が、わざとお帰りなさいと言って開けた…とか。
悪い方の想像は尽きる事無く作りあげられそうだ。…きりがない。

引き返して、もう一度確認する?
このまま逃げ帰る?それでいいの?務が居なくても女性に問い詰めてみればいいんじゃないの?
大人しく帰ったら、随分、戦闘能力の低い、簡単な女だと思われてしまう?

初めから優劣は明らかよ…。
私よりも若くて、それに、あの自信に満ちた顔つき…、スタイルのいい美人だった。
玄関にあったヒール。
私にはあれ程踵の高いピンヒールは履けない。
履いたとしてもスマートに歩けない。

戦闘能力、高めの女性…。

あの女性は、間違いなく、務が言った同じ会社の人。というか、務と居るところを二度見掛けた人。
お店で見掛けた時はそこまで解らなかったけど、今日ははっきり解った。スレンダーでスタイルも良かった。
返しの言葉の選択を間違ったところから私は負けてる。務、居ますか、それが言うべき、まず一声だった。貴女、誰?って。それを…、間違いました、で逃げるなんて…。

…はぁ、…もしかしたら、あの女性が部屋に居た事は、何か事情があったのかも知れないが…。それだって、私は知らない、解らない。…一体どんな事情よ。訳があるなら、説明が無さ過ぎじゃない?自分が居ない時でも部屋に居させている人なんて。もう嫌…。
こんな風に考えるばっかりなんて。


マンションに帰り着いた。足が鉛のように重い…。乗れば取り敢えず部屋のある階まで運んでくれる。
エレベーターに乗りボタンを押して壁にもたれた。
< 77 / 151 >

この作品をシェア

pagetop