彼女の居場所 ~there is no sign 影も形もない~
私たちはBarを出て康史さんの予約したレストランに入った。
このお店も東京の夜景が一望できる贅沢な作りになっている。
やはり私は東京タワーを探してしまう。
あ、あった。他の明かりに負けじと夜の闇に浮かび上がるように優しい色で輝いている。
私はまたこの街に戻ってきた。
この街の夜景が似合う女性になれるかどうかはわからないけれど、またこの街で生きていたい。
彼の隣で。
「早希」と呼ばれて視線を向けると康史さんが微笑んでいる。
「もう一度、乾杯しようか」
「今度は何に?」
「俺と早希の新しい生活に、かな」
康史さんは穏やかな優しい笑顔でワイングラスを持ち上げた。
キャンドルの薄暗い明かりの中でも康史さんの明るい瞳は鮮やかに輝いて見える。
あの憧れの副社長がここにいる。私の目の前に。
はじまりは稔に棄てられた悲しみに流されてしまった一夜だったかもしれない。
でも、確かにあの夜に私は彼に恋をした。
再会は私のクジ運が引き寄せた奇跡だったかもしれない。
私は彼に夢中になった。
逃げ出した私を探して抱き寄せてくれた彼の元からはもう離れられない。
もう二度と逃げ出したりはしない。
私は今ここにいる幸せで胸が震え、目頭が熱くなる。
「はい。私たちの新しい生活に」
嬉しくて少し声が震えてしまったけれど、私もグラスを持ち上げた。
「乾杯」
合わせたグラスからは胸の奥まで届く深いビブラフォーンに似た響きがした。
end
このお店も東京の夜景が一望できる贅沢な作りになっている。
やはり私は東京タワーを探してしまう。
あ、あった。他の明かりに負けじと夜の闇に浮かび上がるように優しい色で輝いている。
私はまたこの街に戻ってきた。
この街の夜景が似合う女性になれるかどうかはわからないけれど、またこの街で生きていたい。
彼の隣で。
「早希」と呼ばれて視線を向けると康史さんが微笑んでいる。
「もう一度、乾杯しようか」
「今度は何に?」
「俺と早希の新しい生活に、かな」
康史さんは穏やかな優しい笑顔でワイングラスを持ち上げた。
キャンドルの薄暗い明かりの中でも康史さんの明るい瞳は鮮やかに輝いて見える。
あの憧れの副社長がここにいる。私の目の前に。
はじまりは稔に棄てられた悲しみに流されてしまった一夜だったかもしれない。
でも、確かにあの夜に私は彼に恋をした。
再会は私のクジ運が引き寄せた奇跡だったかもしれない。
私は彼に夢中になった。
逃げ出した私を探して抱き寄せてくれた彼の元からはもう離れられない。
もう二度と逃げ出したりはしない。
私は今ここにいる幸せで胸が震え、目頭が熱くなる。
「はい。私たちの新しい生活に」
嬉しくて少し声が震えてしまったけれど、私もグラスを持ち上げた。
「乾杯」
合わせたグラスからは胸の奥まで届く深いビブラフォーンに似た響きがした。
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