彼女の居場所 ~there is no sign 影も形もない~

イライラする。

「生もう一杯くださーい」
通りがかった店員のかわいいお兄さんに声をかけた。

「早希、ホントに何があったのよ。元カレの話じゃないんでしょ」由衣子が真面目な顔で聞いてきた。

「由衣子ごめん。自分の中で整理がつかないからまだ説明できない。もう少し待って」
正直に言うと渋々ながら由衣子はうなずいてくれた。

「何かあれば必ず私に言ってよ。一人で抱え込まないでさ」

「ありがと。とりあえず、今夜はもう少し飲みたいから付き合ってね」

「もちろん。でも、店を出たらすぐにタクシーだからね。信楽焼に話しかけられたらたまらないわ」
あはははと笑った。

げっ。

「ちょっと待って!由衣子も知ってるの?なんで、どうしてよ、いつ誰に聞いたのよ!」

「あははは。アレはウケたわ。高橋に聞いたのよ。うーんと、先週だったかな?」

はあ?高橋の奴めー!

「あいつ男のくせにおしゃべりなんだ。他でも喋ってるんのかな。許せん!」

「あははは。じゃ今から高橋を呼び出そうか」
由衣子は笑っているけど、私はかなりイラっとしていた。

頭にきて「そうする!」とすぐさまバッグからスマホを取り出し高橋に電話をした。

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