彼女の居場所 ~there is no sign 影も形もない~
高橋が合流したのはそれから30分程した頃だった。
「早希、お前こえーよ。残業してて電話に出たらお前の怒鳴り声でさ。会議室内に響きわたったぞ」
私は思い切り高橋を睨んで言った。
「は?元はといえば高橋のせいじゃん。それに、何?オフィス内で私用電話にでたの?」
普通は廊下とか、休憩スペースとかでしょ。呆れて横目で見てやる。
「だって、もう遅い時間だしちょうど仕事が終わって帰り支度してたからさ。電話に出ていいって一緒にいた上司もスタッフも言ってくれたんだよ。まさか、お前がいきなり電話で怒鳴るとは思わねえし」
「そもそもあんたのせいで怒鳴ることになったんだからね」
ふんっと鼻を鳴らした。
「まあまあ、二人とも落ち着きなさいって」
由衣子が間に入った。
「お前らってすごいよな。上司以外でお前らだけじゃん、俺のこと怒鳴ったりいきなり呼びつけたりするのって。いや、上司でもこんなことしないわ」
高橋は頼んだビールをぐびぐびと飲んだ。
「ええー?そんなことないでしょ。高橋の彼女はどうなのよ」
由衣がこれくらい当然という顔をして言った。
「俺はそんな怖い女を彼女にしないから。それにここんとこ忙しくて女はいない」
「え?彼女いないの?」
「は?怖くないし!」
由衣子と私は同時に反応して別の返答をしてしまい、顔を見合わせて笑った。
高橋は同期の中で一番気軽に話せる男だ。
高橋の父親が何とかっていううちの会社の関連企業の社長らしいけど、そんなこと興味がないし高橋の人間性とは関係がない。
嫌味のないストレートな性格で話しやすいのだ。
新入社員研修で知り合い、私とは配属も同じだし、高橋と由衣子とは卒後研修なんかで一緒になることが多いらしい。
同期会も結構あるし、私にとって気を遣わずに済む貴重な相手のひとりだ。
「高橋ってさあ、もしかして意外と苦労してんの?」
由衣子が言い出した。
そんなこと考えたこともなかった。
「え?高橋って苦労してんの?何の苦労?仕事がデキる男ってことは知ってるけど」
「まあな。それなりにはな」
高橋は少し笑った。
「早希、お前こえーよ。残業してて電話に出たらお前の怒鳴り声でさ。会議室内に響きわたったぞ」
私は思い切り高橋を睨んで言った。
「は?元はといえば高橋のせいじゃん。それに、何?オフィス内で私用電話にでたの?」
普通は廊下とか、休憩スペースとかでしょ。呆れて横目で見てやる。
「だって、もう遅い時間だしちょうど仕事が終わって帰り支度してたからさ。電話に出ていいって一緒にいた上司もスタッフも言ってくれたんだよ。まさか、お前がいきなり電話で怒鳴るとは思わねえし」
「そもそもあんたのせいで怒鳴ることになったんだからね」
ふんっと鼻を鳴らした。
「まあまあ、二人とも落ち着きなさいって」
由衣子が間に入った。
「お前らってすごいよな。上司以外でお前らだけじゃん、俺のこと怒鳴ったりいきなり呼びつけたりするのって。いや、上司でもこんなことしないわ」
高橋は頼んだビールをぐびぐびと飲んだ。
「ええー?そんなことないでしょ。高橋の彼女はどうなのよ」
由衣がこれくらい当然という顔をして言った。
「俺はそんな怖い女を彼女にしないから。それにここんとこ忙しくて女はいない」
「え?彼女いないの?」
「は?怖くないし!」
由衣子と私は同時に反応して別の返答をしてしまい、顔を見合わせて笑った。
高橋は同期の中で一番気軽に話せる男だ。
高橋の父親が何とかっていううちの会社の関連企業の社長らしいけど、そんなこと興味がないし高橋の人間性とは関係がない。
嫌味のないストレートな性格で話しやすいのだ。
新入社員研修で知り合い、私とは配属も同じだし、高橋と由衣子とは卒後研修なんかで一緒になることが多いらしい。
同期会も結構あるし、私にとって気を遣わずに済む貴重な相手のひとりだ。
「高橋ってさあ、もしかして意外と苦労してんの?」
由衣子が言い出した。
そんなこと考えたこともなかった。
「え?高橋って苦労してんの?何の苦労?仕事がデキる男ってことは知ってるけど」
「まあな。それなりにはな」
高橋は少し笑った。