彼女の居場所 ~there is no sign 影も形もない~
私の表情が余程不機嫌そうに見えたのか、副社長は焦ったようだ。

「早希さん、誤解した。ごめん」

余りにも切ない声に驚いてしまった。その上、さっきまで『早希』と呼んでくれていたのに『早希さん』に戻っているし。

「私、何も怒っていませんよ」
笑顔を見せてまた副社長の逞しい腕に頬を寄せ目を閉じた。

「君がまたいなくなるのかと思ったんだ」

え?

副社長の切ない声にまた私は目を開き顔を上げた。

彼の瞳には不安な色が浮かんでいる。
ああ、副社長にとって、あの夜私がいなくなったのは本当に予想外だったんだなと思った。

副社長に抱かれた女性が過去にいや現在進行形を含めて何人いるかは知らないけど、抱かれた後に逃げ出したのは、どうやら私だけだったらしい。

「逃げませんから」
微笑むと副社長の硬い表情も少し緩んだ。

「だから、こうして副社長に抱き付いていていいですか」
私がそう言うと、副社長は
「それじゃ俺が足りない」
と上からのしかかるような体勢になりにやりと笑って私に深くて甘いキスをした。

一瞬見えた副社長の瞳は先ほどまでの不安な色は消え去り妖艶な色に変わっていて、私の身体にもまた火を付けた。



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