愛を教えて
第1章
自分に質問するとしたら、まず何を質問する?
私なら、何故こうなったの?と質問する。
答えなんてない。
自分に質問するのだから自分が答えをわからないのに答えられるわけがない。
私の目の前には、真っ白い棺があって中にはまるでただ眠っているかのような姿の母がいる。
つい昨日亡くなって、私にはたった1人の身内だった。
他の知っている身内なんていない。
これからどうしようかなんて考えられなかった
絶望したかのように何も考えられず、しばらくこのままで母の眠る棺の目の前にただただ座っていた。
母が病に侵されていたとは知らず、40歳の若さで他界するとは思わなかった。
昨日の朝まで元気だったのに。
私は最低だ。
大好きな母が病に侵されているとは知らずに…
私はやっぱり人を不幸にしかできない…
私は最低だ。最低の人間なんだ……
また泣く私に左肩を誰かの手を感じたけど気にせずに黙った。
____________ポン
「雪菜…うちにしばらく住めよ。俺のお袋も親父も言ってる。しばらくは1人だと心細いだろ?」
左肩に手を置いたまま私に声をかけてくれたのは3歳から一緒に育った憐。
私の2つ上で東堂なんちゃらの大手会社で働いていて女性からモテまくりの人。
クールなところがあるけれどいつも私と母を気にしていてくれた。
憐の家族からも沢山お世話になって、本当に感謝している。
「ううん、たくさんお世話になったから。
お母さんはもういないけどこれからは1人でも生きていけるように頑張る。もういい歳してるしね。」
母はいたけれど私にはお父さんの存在は知らない。
顔も知らなければ、名前すらも知らない。
前に一度だけ聞いたことがあった。
だけれど返された一言が、
「とても素敵な人。でも事故死でもういないわ」
お母さんの悲しみに溢れた瞳を、苦しい思いをしたあの顔をもう見たくなくてあれからは父の話はしなかった。
どんな人かも知らず、名前も素顔も知らない父だけれど、きっと愛し合っていたに違いない。
根拠はないけれど…。